施術の現場から

日々の施術の現場から、お客様の体を通して感じたことをまとめました。

・マニュアル化できない世界      ・手と足の先端を重視         ・自覚症状と実際の状態は違う
・高密度な女性の肩こり         ・腰痛いろいろ              ・手のしびれ現代事情考
・高度経済成長期と外反母趾     ・高血圧と六つの首(ネック)

マニュアル化できない世界:

日々の施術をさせていただく中で、いつもその個体差におどろかされます。前の方にうまくいった手順を、次の方に適用しても、結果が出ないこともたびたびです。 お1人お1人が、違った経緯で肉体を使ってこられたことがよくわかります。飛躍して言えば、「同じ人間は2人とはいない」という証明のような気もしています。

精神と肉体のつながりは、科学的に数値化しにくい分野ですが、相互関連は、西洋医学の分野でも検証がされつつあります。職業あるいは生活環境によって、一人ひとりの心身の使い方が違うのは、当然のことです。大げさにいえば、その方の身体には、誕生から現在まで「心身の使用履歴」がきざまれているのです。また、その方が生きてきた「歴史」を映し出す「年輪」であるともいえるかもしれません。

したがって、過去に遡っての、怪我などの履歴、運動や仕事で集中的に使用した体の部分について、お知らせいただくことが大変参考になります。

手と足の先端を重視:

体重を支えるという意味で、重力のダメージを最も受けている足が、施術の重要ポイントになります。 また、川の流れにたとえると、ごみが溜まりやすいのはカーブしている部分です。指先などの体液の折り返し地点にも改善のキーポイントが隠されています。

「外反母趾」、「魚の目(うおのめ)」、「爪の変形」、「足裏の角質」、「骨が鳴る部分」も、患部を改善するための大事なポイントです。 堅い部分を手で崩して行くので、痛みが伴うことがあります。出来るだけ負担が少ないように心がけてはいるつもりですが、効果と痛みのバランスをうまく調整するのに苦労するところです。

自覚症状と実際の状態は違う:

お客様の訴える部位は尊重しなくてはいけないのですが、コリがある部分だけを施術しても、一時的な快感以上の効果が表れないことも実感しております。

からだは全体が一枚の布のようなもので、テントを張るときに、一箇所がつっぱったり、緩んだりすれば、テント全体の構成に影響します。根本原因となる部位を中心に施術することが、解決の近道になります。 痛みを感じる部分よりも、感じない硬い部分のほうが、悪化度が高い場合もあります。

また、コリがほどけてくると、その過程で、以前は感じなかった痛みが感じられる場合もあります。

高密度な女性の肩こり:

女性の場合に多いのですが、施術を進めていくうちに、一見したところでは分からない奥深い高密度のコリに遭遇し、急遽、施術の手順を修正することがよくあります。家事や子育てなど、自己調整の利かない仕事の蓄積から生じたものではないかと思われます。たとえば、子育て期間でしたら、子どもを泣き止むまで抱っこし続けるなど、腕がしびれたからといって途中で放り出すわけにはいきません。

男性でも、器械体操の経験者、楽器演奏者に似た状況が見受けられます。腕のしびれにもかかわらず、苛酷な継続使用を一定期間経験されているという点で、共通項があります。

腰痛いろいろ:

腰痛の中には、回り道になりますが、足から施術をした方が痛みの解消が早いというケースがあります。

その判断の目安はおおよそ次のとおりです。
@ 腰痛が左右いずれかに片寄っている
A 腰痛側の足(足裏、足の甲、足首、ふくらはぎ、膝、太もも等)に故障や違和感(むくみ、しびれ、冷え、ほてり等)がある
B 腰痛側の背中、肩、首、頭部等に痛みが感じられる

この場合、代謝不良の連鎖により、筋肉に炎症が発生している可能性があります。この炎症が抜けると腰痛が緩和されるのではないかと考えられます。

腰痛が左右いずれかに片寄っている場合、足からの対応で痛み早期緩和の可能性があります。

手のしびれ現代事情考:

来院者の中で手のしびれが多い職業はと振返ってみますと、プロの楽器演奏者とダンサーが一番先に浮かびます。共通するところは、同じ姿勢での長時間筋肉酷使かと推察できます。

ところが最近、パソコンを一日中使用する方に手のしびれの訴えが顕著と気づきました。同一筋肉酷使度がそれらのプロに迫って来たのでしょうか。

しかし、前者は40歳を超えた方が大半、パソコンの方は20代から平均しており、既に追い越しているのが実態かも知れません。しかも目の疲れがプラスされて・・。プロの方の現役寿命延長に役立った施術法をアレンジして、パソコンによる手のしびれ早期解消と効果の持続性確保に取組んでいます。

パソコンによる肩こり、手のしびれ、目の疲れの根本的解消のお手伝いをしています。

高度経済成長期と外反母趾:

女性の社会進出とハイヒールは、一体となってわが国の高度経済成長を支えたと申して過言でないと思います。

子供の頃見かけた、肩で荷を担ぐ仕事の男性の勲章は肩の「タコ」でした。高度経済成長期、女性の八面六臂活躍の勲章は外反母趾かも知れません。

経験から、外反母趾は時間はかかるものの、周辺の毛細血管血行回復等でかなり改善が見られるケースが少なくありません。これは前述の男性自慢の「タコ」も力仕事を止めると年々小さくなったさびしい記憶に似ています。

しかし、外反母趾の場合、足の使用を止めることは出来ません。今後さらに硬化するのを防ぎ、且つ遡って改善可能な周辺血行回復努力が必要です。

その改善プロセスでの特徴は、慢性の腰痛・肩こり・偏頭痛・冷え性等の改善も同時並行で進むことです。これは、外反母趾がそれら慢性症状の火元の一つになっている可能性をも示していると考えています。

高血圧と六つの首(ネック):

90%以上が原因不明といわれる高血圧症について、筋肉硬化等で血管に負担がかかる箇所が生じ、高い血圧の要求が出ている可能性を示唆する説があります。

しかし、その要求に応じつづけていると脳出血等で寿命が縮まるとするなら、血圧アップの要求に応じず、延命策として血圧降下治療を選択するのが自然ではあります。

通常、運動療法も効果的と指導されます。これは筋肉硬化が緩和される結果とも考えられます。血管圧迫が懸念される箇所としては、真っ先に「首」と名のつく部分が思い浮かびます。両手首、両足首、そして頭が乗った首の五つです。さらに腰も「クビレ」と表現されるごとく首とよく似ており、加えると六箇所。この六つの「首」(文字通りネック)の柔軟性を回復することが、高血圧運動療法の助力になれば幸いと、取り組んでいる次第です。


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